代わりに頼む方、承諾や同意を求める方へ代理・承諾・同意の書面を、
誤解なく書く
委任状、承諾書、同意書、念書は、どれも署名をもらう一枚の紙に見えますが、働きが違います。委任状は他人に代理権を与える書面、承諾書は相手の求めに応じて「いいですよ」と答える書面、同意書は説明を受けたうえでの了解を残す書面、念書は一方が差し出す約束です。題名が同じでも、中身の書き方で、誰が何をどこまでしてよいのかが決まります。代理の範囲の決め方、白紙委任の危険、署名押印と本人確認、期限と撤回、承諾を取り付ける順序、同意の対象を一つずつ特定する書き方、個人情報の同意書、未成年者の署名欄、官公署の手続の委任状まで、民法の代理・委任の規定、個人情報保護法の同意の規律、消費者契約法の条項の無効の規定を条文で確かめながら、契約書作成の実務の経験をもとに整理しました。代わりに手続を頼む方、受け取る窓口の担当者、他人の承諾を求める方、利用者や参加者から同意書を取りたい事業者の方が、書面を作る前、受け取る前に押さえておきたい点をまとめています。業種ごとの同意書(施術・治療・撮影など)は別のガイドで扱い、このガイドは、どの場面にも共通する書面の作り方に絞っています。
どの書面を作ればよいか迷っている方

委任状・承諾書・同意書・念書の違い
委任状、承諾書、同意書、念書は、題名が似ていても、差し出す人も、受け取る人も、生じる効果も違います。誰が誰に何を差し出す書面かで分けると、題名に引きずられずに選べます。
契約は、法令に特別の定めがある場合を除き、書面がなくても成立します(民法522条2項)。書面は、あとから内容を確かめるための証拠として働くため、何を残したいのかを先に決めます。
代わりに手続を頼みたい方・頼まれた方

委任状に書く事項と、代理の範囲
代理人が権限内で本人のためにした意思表示は、本人に直接効力を生じます(民法99条)。委任状では、この権限の範囲をどこに引くかが中身になります。
「一切の件」のような広い書き方にするか、個別の事項を挙げるか、署名押印や金銭の受領といった重い権限を別に書くか、代理人が他の人に頼めるかを決めておきます。
空欄のまま渡す・受け取る方

白紙委任状の危険と、受け取る側の確認
代理人の欄や委任事項を空欄にして渡すと、誰がどの範囲で使うのかを、本人が決められなくなります。第三者に代理権を与えた旨を表示した者は、その範囲の行為について責任を負うことがあります(民法109条)。
受け取る側も、本人への確認や、委任事項の確認なしに信じてよいとは限りません。無権代理の効果と相手方の確認の問いを整理します。
同意書を取りたい事業者の方

説明の確認と同意を分けて書く
同意書には、説明をしたことの記録、リスクの受け入れ、権利の許諾という別々の働きがあります。一枚に混ぜると、何に同意したのかが読み取れなくなります。
責任の全部を免除する条項や、消費者の利益を一方的に害する条項は、消費者契約では無効になります(消費者契約法8条・10条)。同意の対象を項目ごとに書き分ける方法を整理します。
個人情報を集める事業者の方

個人情報の同意書は、いつ必要になるか
個人情報を集めるときに、いつでも同意書が要るわけではありません。利用目的の通知・公表で足りる場面と、あらかじめ本人の同意が必要な場面(要配慮個人情報の取得、第三者提供、外国にある第三者への提供など)を分けて考えます。
同意書には、情報の種類、提供先、目的を具体的に書き、同意の撤回や利用停止の請求の受け方まで決めておきます。
役所の手続を人に頼む方

官公署の手続の委任状と、本人申請との違い
役所の手続は、本人が申請する場合と、代理人が申請する場合とで、必要な書面が変わります。窓口での本人確認と委任状の関係を、手続の種類を問わない形で整理します。
書類の作成を頼むことと、手続の代理を頼むことは別の話です。委任状に書く手続の特定、提出先、代理人の権限の範囲を確かめます。
このガイドの解説ページ
よくあるご質問
委任状・承諾書・同意書・念書は、何が違いますか?
委任状は、他人に代理権を与える書面です。代理人が権限内で本人のためにした意思表示は、本人に直接効力を生じます(民法99条)。承諾書は、相手の求めに応じて「いいですよ」と答える書面で、たとえば賃借権の譲渡や転貸には賃貸人の承諾が必要です(民法612条)。同意書は、説明を受けたうえでの了解を残す書面、念書は一方が差し出す約束の書面です。効力は題名ではなく中身で決まります。
白紙委任状を渡すと、何が危険ですか?
代理人の欄や委任事項を空欄のまま渡すと、誰がどの範囲で使うかを本人が決められなくなります。第三者に代理権を与えた旨を表示した者は、その範囲の行為について責任を負うことがあり(民法109条1項)、代理人が権限外の行為をした場合も、第三者が権限があると信じる正当な理由があるときは責任を負うことがあります(民法110条)。渡すときは、宛先と使用目的を書き、空欄を残さないのが基本です。
委任状はいつまで有効で、やめたいときはどうしますか?
有効期限の定めがなくても、委任はいつでも解除できます(民法651条1項)。ただし、相手方に不利な時期に解除したときなどは、損害を賠償する必要が生じる場合があります(同条2項)。また、本人が死亡したとき、代理人が死亡したり破産手続開始の決定や後見開始の審判を受けたとき、委任による代理権は委任が終了したときにも消えます(民法111条)。期限と対象の手続の完了までを書き、やめるときは相手方にも知らせておきます。
同意書に署名してもらえば、事業者は責任を免れますか?
いいえ。同意書は、説明を受けたことと了解の記録として働きますが、消費者契約では、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号)。消費者の利益を一方的に害する条項も無効になります(同法10条)。責任の免除を一枚の同意書に混ぜず、説明の確認、リスクの受け入れ、権利の許諾を分けて書くのが基本です。
個人情報を集めるときは、必ず同意書が必要ですか?
必ずではありません。個人情報を取得したときは、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに利用目的を本人に通知し、または公表します(個人情報保護法21条1項)。あらかじめ本人の同意が必要になるのは、利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱う場合(18条1項)、要配慮個人情報を取得する場合(20条2項)、個人データを第三者に提供する場合(27条1項)、外国にある第三者に提供する場合(28条1項)などです。必要な場面に絞って同意書を取ります。
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運営事務所・ご相談のご案内監修:アトラス行政書士法人(代表社員 荒木素子・特定行政書士) 最終確認日:2026年10月22日