承諾書の書き方:誰の何を、どの範囲で承諾するのかを特定する

承諾書は、題名が似ていても中身がばらばらになりやすい書面です。承諾の型、法律が承諾を求める典型、承諾の対象の特定、承諾する人の資格、承諾書に混ぜない方がよい条項を、民法の条文を確かめながら整理します。

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対象を「本件」とだけ書いた承諾書は、内容が変わったときに、承諾がどこまで及ぶのかが書面の中から読み取れません。

このページの要点

  • 承諾書は、承諾する人が差し出す単独型と、申請書などに承諾欄を設ける一体型に分けて考え、承諾と合意を混ぜない。
  • 承諾の対象は、行為・人・物件・期間・範囲の五つで特定し、内容が変わったときは改めて承諾を得る旨を書く。
  • 承諾する人の資格を確かめる。共有物の変更は他の共有者の同意が必要(民法251条1項)、代理人が承諾するなら委任状に承諾の権限が要る。
  • 免責、違約金、時効の援用をしない旨、強制執行の承諾などは承諾書に混ぜない。時効の利益はあらかじめ放棄できない(民法146条)。

結論:承諾書は「誰の、何を、どの範囲で承諾するのか」を特定する書面。題名ではなく、承諾の対象と承諾する人の資格で価値が決まる

承諾書は、相手の求めに応じて「その行為をしてよい」「その内容でよい」と答えるために、承諾する人が差し出す書面です。賃貸物件の転貸や改装、債権の譲渡、自動車の保管場所として土地を使うこと、保証人になること、子どもの契約への関与など、日常の場面でも事業の場面でも、承諾書は幅広く使われています。ところが、承諾書は、題名が似ていても、中身がばらばらになりやすい書面です。「何について承諾したのか」が読み取れない、承諾した人にその資格があるのか分からない、承諾した後に内容が変わっても承諾が続くのか不明、というのが典型です。このページでは、承諾書の型、承諾が必要になる典型、承諾の対象の特定、承諾する人の資格、承諾書に混ぜない方がよい内容を、条文を確かめながら整理します。先に結論を示します。

  • 承諾書には二つの型があります。承諾する人が単独で差し出す型と、相手の申請書や契約書に承諾欄を設けて一体にする型です。どちらの型でも、承諾の対象を特定する書き方が中心になります。
  • 法律が承諾を要求する場面は限られています。たとえば、賃借権の譲渡や転貸(民法612条1項)、債権譲渡の債務者への対抗要件としての承諾(民法467条1項)、未成年者の法律行為に対する法定代理人の同意(民法5条1項)、共有物の変更に対する他の共有者の同意(民法251条1項)などです。法律上の承諾が要る場面では、承諾が欠けると効果が生じなかったり、解除の原因になったりします。
  • 承諾の対象は、「何を」「誰が」「誰に対して」「いつまで」「どの範囲で」の五つで特定します。「本件工事」「本件物件」のような曖昧な表現のままだと、後で内容が変わったときに、承諾が及ぶのかが争いになります。
  • 承諾する人に資格があるかを確認します。所有者か管理者か、共有者の全員か、法人の代表者か、本人の代理人か、で承諾の効力が変わります。
  • 承諾書に、責任の免除、違約金、時効の援用をしない旨、強制執行の承諾などを混ぜると、題名と効力の釣り合いが取れなくなります。承諾と合意は、書面の題名ごと分けて考える方が安全です。

承諾を取り付けるときの順序や、先に行為をしてしまった場合の追認は承諾書の取り付け方のページで、書面の種類の違いは委任状・承諾書・同意書・念書の違いのページで扱います。このページは、書面そのものの組み立てに絞ります。

承諾書の型:単独型・承諾欄一体型・合意書型

まず、「承諾」という言葉が、二つの意味で使われていることに注意が必要です。一つは、契約の成立に関する承諾です。民法522条1項は、契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(申込み)に対して相手方が承諾したときに成立すると定めています。もう一つは、他人が何かをすることを許す意思表示としての承諾です。民法612条1項が、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができないとしているのがその例です。承諾書で扱われるのは、主に後者です。民法は、場面によって「承諾」「同意」「許諾」という言葉を使い分けており(民法5条は「同意」、民法104条・108条は「許諾」)、法律上の効果も場面ごとに違います。

承諾書で登場する三者

承諾を求める側行為をしたい人。承諾書の宛先になる
承諾を求める
承諾する側承諾書を差し出す人。承諾する資格が必要
承諾の内容が及ぶ
第三者承諾の効果が及ぶ人(譲受人、転借人、新しい所有者など)。承諾書で特定しておく

承諾書では、第三者が誰かを書かないものが多く見られます。第三者が特定されていないと、承諾が誰に向けられたのかが分かりません。

承諾書の型は、次の三つに分けると整理しやすくなります。

承諾書の型の比較

型特徴向く場面注意
単独型(承諾する人が差し出す)承諾する人が、承諾の内容を書いて署名する。相手方が受け取って保管する承諾の内容が一方的で、相手方に義務を課さない場合(転貸の承諾、使用の承諾など)相手方の義務(条件の遵守など)を課したいときは、単独型では書きにくい。条件付きの承諾の書き方は別のページで扱う
承諾欄一体型(申請書や契約書に承諾欄を設ける)承諾を求める側の申請書などの末尾に、承諾する人の欄を設ける提出先の様式があり、承諾の対象がその様式で特定されている場合様式の対象と、承諾欄の記載(承諾する範囲)が一致しているかを確かめる。承諾欄だけが先に署名されると、対象が後から書き加えられるおそれがある
合意書型(承諾と相手方の義務を一体にする)承諾の内容と、相手方の義務や費用負担などを、双方が署名する書面にまとめる承諾と引き換えに条件や対価がある場合、複数の当事者がいる場合題名が承諾書でも、中身が合意書になっていることがある。承諾する人と義務を負う人が混ざらないように、当事者の役割を分けて書く

実務でよく見られるのは、題名は承諾書なのに、本文の途中から「当事者は次のとおり合意する」という形になっているものです。承諾と合意が混在すると、署名した人が何に責任を負うのかが分かりにくくなります。一方的な承諾にとどめるのか、双方の権利義務を決めるのかを最初に決め、前者なら承諾書、後者なら合意書という題名と構成にそろえるのが基本です。承諾書と合意書のどちらにするかの考え方は、承諾書の取り付け方のページで取り上げます。

承諾が法律上必要になる典型と、書面に書くべきこと

承諾書を求められる場面の多くは、法律が承諾を要求しているか、契約や提出先の様式が承諾を求めているかのどちらかです。前者の典型を条文で確かめておきます。

条文承諾・同意が登場する主な条文

  • 民法612条1項・2項賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸できない。違反して第三者に使用・収益をさせたときは、賃貸人は契約を解除できる書面では承諾書には、承諾の対象(誰に、何を、どの範囲で)を書く。承諾なしに先行すると、解除の問題が生じる
  • 民法467条1項・2項債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗できない。債務者以外の第三者に対抗するには、確定日付のある証書による通知または承諾が必要書面では債務者の承諾書は対抗要件を整える書面。承諾する債務者、譲渡される債権、譲渡の相手、日付の特定が肝心。確定日付が要るかを確認する
  • 民法5条1項未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意が必要。単に権利を得、または義務を免れる行為は例外書面では同意書の署名欄は、未成年者と法定代理人を分ける。詳しくは別のページ
  • 民法251条1項各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない(形状・効用の著しい変更を伴わないものを除く)書面では共有の不動産などの承諾では、共有者の全員の署名が必要になる場面がある。署名者の漏れが典型的な欠陥
  • 民法446条2項・465条の2第2項保証契約は、書面でしなければ効力を生じない。個人根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じない書面では保証の引受けを承諾書で行うときは、書面の方式と極度額の定めの有無が効力に関わる。保証の中身は別のガイドで扱う
  • 自動車の保管場所の確保等に関する法律4条1項一定の処分を受けようとする者は、保管場所を確保していることを証する書面で政令で定めるものを提出しなければならない書面では他人の土地を保管場所にするときの使用承諾の書面は、政令や警察の案内で内容と様式が定められる。提出先の様式に従う

条文は要約です。承諾書が実際に何を満たす必要があるかは、条文の全文と提出先の案内で確認してください。

表の各条文について、書面の作り方に関わる点を補足します。

賃借権の譲渡・転貸の承諾(民法612条)では、承諾書に「誰が」「どの物件を」「誰に」転貸するのかを書きます。賃借人が貸主に差し出す形にすると、承諾する貸主の署名が必要です。承諾の範囲を、期間や用途を含めて書いておくと、後で転借人が用途を変えたり、期間を超えて使い続けたりしたときに、承諾が及ばないことを説明しやすくなります。承諾の内容が曖昧だと、承諾を得たつもりで進めた側と、そこまで承諾していないとする側とで、認識が食い違う原因になります。

債権譲渡の債務者の承諾(民法467条)は、承諾すれば債権の譲渡そのものが成立するという意味ではありません。債権は原則として譲り渡すことができ(民法466条1項)、当事者が譲渡を禁止または制限する旨の意思表示をしていても、債権の譲渡の効力は妨げられません(同条2項)。債務者の承諾は、債務者その他の第三者に対抗するための要件です。さらに、債務者以外の第三者に対抗するには、通知や承諾が確定日付のある証書によって行われる必要があります(民法467条2項)。そのため、債務者の承諾書では、承諾する債務者、譲渡される債権の特定、譲渡人と譲受人、承諾の日付が重要で、確定日付が必要かどうかの確認が欠かせません。譲渡の合意そのものと、債務者その他の第三者に対抗するための要件の整備とは、別の問題として分けて整理しておく必要があります。

共有物の承諾(民法251条・252条)も、見落としやすい点です。共有物に変更を加える場合は、他の共有者の同意が必要です(民法251条1項)。一方、共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決めるとされています(民法252条1項)。つまり、承諾の対象となる行為が、変更なのか管理なのかによって、必要な署名者の範囲が変わります。承諾書の宛先と署名欄を設計する前に、行為の性質を確認する必要があります。

自動車の保管場所の使用承諾は、手続を所管する側が様式を定めている典型です。保管場所の確保を証する書面の提出は、自動車の保管場所の確保等に関する法律4条1項に基づく手続の一部です。この書面の内容は政令で定められており、使用する土地の所有者や管理者が承諾したことを示す書類の記載事項も、提出先の案内に従って整える必要があります。このように、承諾書が提出先の様式で決まる手続では、民法の一般論よりも、提出先の案内が先に来ます。

承諾の対象の特定:五つの要素と、変更があったときの扱い

承諾書で最も大切なのは、承諾の対象の特定です。実務でよく見られる欠陥は、対象が「本件」「当該工事」「上記の件」のような表現にとどまり、何を指すのか書面の中だけでは分からないというものです。対象を特定するときの五つの要素を、問いの形で整理します。

確認の問いと理由承諾の対象を特定するための五つの問い

  1. 何を承諾するのか(行為の内容)

    「工事」「転貸」「使用」「譲渡」など、承諾の対象となる行為を、動詞で特定する。名詞だけで済ませると、行為の範囲が読み取れない。

  2. 誰が、その行為をするのか(行為をする人)

    承諾は、特定の人に向けて与えるのが基本。行為をする人が変わっても承諾が及ぶのかは、書かなければ分からない。

  3. 何について承諾するのか(物件・債務・権利)

    住所・地番・型番・契約の年月日など、対象を第三者が見ても同定できる表記を使う。曖昧な呼称だけだと、承諾が及ぶ範囲が争われる。

  4. いつまで、あるいは、いつの行為について承諾するのか(期間・時期)

    期限のない承諾は、いつまでも続くと読まれる。工事なら工期、使用なら期間を書く。

  5. どの範囲か(用途・方法・数量などの条件)

    用途の限定、工事の範囲、人数などを書く。範囲を超えた行為は、承諾の範囲外であることを明らかにできる。

五つの要素を満たしたうえで、もう一つ決めておきたいのが、「内容が変わったとき」の扱いです。承諾の後で、行為の内容が変更されることは少なくありません。工事の範囲が広がる、転借人が入れ替わる、使用の期間が延びる、といった場面です。このとき承諾書に何も書いていないと、最初の承諾が変更後の内容にも及ぶのか、改めて承諾が必要なのかが、書面から読み取れません。変更があったときは改めて書面で承諾を得る旨を書いておく方が、承諾した側の意思が明確になり、承諾を求めた側にとっても、後の争いを避けられます。

書き方の例(一般的な例) 承諾の対象の書き方

行為の特定

よくある書き方「本件工事を承諾します。」
整えた書き方「貴殿が別紙に記載の範囲・方法で行う○○工事(以下「本件工事」といいます)を、下記の条件で承諾します。」

理由「本件」を使うときは、初出の箇所で定義しておく。定義がないと、何を承諾したのか書面の中で完結しない

範囲の限定

よくある書き方承諾する範囲についての記載がない
整えた書き方「承諾の範囲は、別紙に記載の工事に限り、他の工事には及びません。」

理由範囲を限定することで、範囲を超えた行為が承諾の外にあることを示せる

期間

よくある書き方「承諾する」とだけ書かれ、期間が書かれていない
整えた書き方「承諾の有効期間は、令和○年○月○日から令和○年○月○日までとします。」

理由期間があることで、いつまで承諾が続くのかが明らかになる。期間後は改めて承諾が必要になる

変更時の扱い

よくある書き方変更についての記載がない
整えた書き方「本件工事の内容を変更するときは、あらかじめ書面により改めて承諾を得るものとします。」

理由承諾が変更後の内容にまで及ぶという主張を避ける

第三者の特定

よくある書き方「相手方が指定する者」
整えた書き方「転借人は、下記の者に限ります。」と、氏名または名称・住所を特定する

理由特定しないと、誰に対する承諾なのかを判断できず、承諾の効力が及ぶ人が広がりすぎる

書式の例

承諾書の書式の例(単独型の一般的な例)

○○ 殿

私は、貴殿が下記の行為をすることを、下記の範囲および条件で承諾します。

1 承諾する行為  貴殿が○○において行う○○(以下「本件行為」といいます)

2 対象      ○○(所在地・地番・型番などで特定)

3 承諾の期間   令和○年○月○日から令和○年○月○日まで

4 承諾の範囲   本件行為は、別紙に記載の範囲に限り、これを超える行為には承諾の効力が及びません。

5 変更      本件行為の内容を変更する場合は、あらかじめ書面で改めて承諾を得るものとします。

6 承諾する資格  私は、対象の所有者(または共有者全員の同意を得た者)であることを確認します。

  • 令和○年○月○日  承諾者 住所・氏名  印

固有名詞・日付・事項は伏せた一般的な書式の例です。提出先が様式を定めている場合は、その様式を優先します。

承諾する人の資格:所有者か、共有者の全員か、代理人か

承諾書は、承諾する権限のある人が署名してはじめて意味を持ちます。承諾する人に資格がなければ、承諾書は紙の上の約束にとどまります。確認すべき場面を整理します。

承諾する人の資格の確認

場面確認する点資格を示す方法の例
所有物についての承諾登記や契約上の所有者・管理者と、署名者が一致するか登記事項の確認、所有者の本人確認書類。賃借人が自分の名で承諾することはできない
共有物についての承諾変更行為か管理行為か。変更なら全員の同意、管理なら持分の過半数(民法251条・252条)共有者全員の署名と押印。共有者の一部が行方不明などの場合の特別の仕組みは条文で確認
法人の承諾署名者が、代表者かどうか。担当者が署名する場合、その権限があるか代表者の署名、会社の担当者に承諾の権限を与える委任状
代理人による承諾本人から代理権を与えられているか。承諾の権限が委任事項に含まれているか委任状(本人の署名・押印)。委任事項に「承諾」が入っていることが条件になる
未成年者・判断能力が不十分な人の承諾法定代理人の同意や、代理の有無(民法5条など)法定代理人の署名欄。詳しくは別のページ

表の中で、見落とされることが多いのは、代理人による承諾の場面です。承諾書を代理人が署名する場合、その代理人の委任状に、承諾する権限が含まれているかを確認する必要があります。「手続一切」と書かれた委任状でも、承諾のような重い権限が含まれるかは、書き方によって読み方が分かれます。代理権の範囲の書き分けについては、委任状の代理の範囲で扱っています。民法99条1項は、代理人が権限内で本人のためにすることを示してした意思表示は本人に直接効力を生じるとしており、権限の外の行為にまでは及びません。

共有の場面では、署名者の漏れが典型的な欠陥になります。たとえば、土地を共有している兄弟のうち、一人だけが承諾書に署名してしまったとき、変更に当たる行為であれば、他の共有者の同意が欠けることになります(民法251条1項)。承諾を求める側は、登記事項などで共有者の全員を確認し、署名欄を共有者の人数分用意します。共有者が多い場合や、所在が分からない共有者がいる場合には、民法251条2項・252条2項のように、裁判所の関与する仕組みが置かれていますが、これは承諾書では代替できない別の手続です。

承諾する資格を確認する方法として、承諾書の中に、「私は承諾する権限を有する」旨の確認文を入れる書き方があります。ただし、この文があっても、実際に権限があることの証明にはなりません。確認文は、資格を偽って署名したときに、後で責任を問いやすくするという意味合いで置くもので、資格の確認そのものは、登記事項や本人確認書類で行います。

承諾書に混ぜない方がよいもの:免責・違約金・時効の援用・強制執行の承諾

承諾書は、一方的な意思表示の書面です。そのため、承諾とは別の効力を持たせたい条項を詰め込むと、題名と効力の釣り合いが取れなくなります。実務でよく見られる例を、その問題点とともに整理します。

書き方の例(一般的な例) 承諾書に混ぜがちな条項

時効

よくある書き方「主たる債務について時効が完成しても、私は時効の援用をしない。」
整えた書き方この条項は書かない。時効の利益は、あらかじめ放棄することができない(民法146条)

理由時効の利益をあらかじめ放棄する定めは、効力が認められない。書くと、他の条項の信頼も損なう

承諾の撤回

よくある書き方「承諾を一切撤回しない。」
整えた書き方撤回できる場面とできない場面を整理して書く。条件付きの承諾にして、承諾の範囲を限定する

理由一律に撤回を封じる書き方は、争いの種になる。範囲と期間を限定するほうが、承諾を受ける側にも明確

強制執行

よくある書き方「強制執行を受けても異議を述べない。」「差押えを承諾する。」
整えた書き方承諾書には書かない。強制執行は、法律が定める手続によって行われる

理由承諾書に書いたからといって、手続を省略できるわけではない。誤解を生む条項になる

免責

よくある書き方「一切の責任を負わない。」
整えた書き方承諾する側が負う責任の範囲を限定して書く。または、承諾書には責任に関する条項を置かず、別に合意書を作る

理由承諾の書面と責任の定めは別の層。混ぜると何に署名したのかが分かりにくい

違約金

よくある書き方「承諾に反した場合は違約金を支払う。」
整えた書き方承諾書には置かない。条件違反の効果は、別に合意書で定める

理由一方的な意思表示である承諾書に違約金を置くと、双方の合意があったとは評価されにくい場面がある

管轄

よくある書き方「貸主の住所地の裁判所を専属的合意管轄とする。」
整えた書き方承諾書には置かない。必要なら、合意書に置く

理由承諾書は一方的な書面で、管轄の合意には双方の意思が必要。一方的に書いても足りない

これらの条項は、承諾書を差し出す側が不利になる方向に働くことが多いものです。承諾する側は、署名の前に、書面の中に「承諾」以外の条項が入っていないかを確認する必要があります。承諾を求める側にとっても、承諾書に不相当な条項を入れると、承諾書全体の信頼が損なわれ、本来得たかった承諾の効力が争われるおそれがあります。

保証の引受けを承諾書で行う場面は、特に注意が必要です。保証契約は、書面でしなければ効力を生じません(民法446条2項)。個人が保証人になる根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません(民法465条の2第2項)。事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証などは、公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、効力を生じない場合があります(民法465条の6第1項)。また、主たる債務者が事業のための債務の保証を委託するときは、財産や収支の状況などの情報を提供する義務があります(民法465条の10第1項)。保証の承諾書に、これらの確認が抜けていると、承諾書があっても保証が効力を生じない可能性があります。保証の中身の整理は、別のガイドの役割です。

起きがちなこと:承諾書をめぐる場面別の整理

最後に、承諾書の書き方をめぐって起きがちな場面を整理します。多くは、対象の特定、承諾する人の資格、混在する条項のいずれかに関わるものです。

場面別の起きがちなこと

  • 対象を「本件」「上記」とだけ書いた承諾書の中で何を指すのか読み取れず、後から内容が変わったときに、承諾が及ぶかが争いになる。
  • 承諾の期間を書かなかった承諾が無期限に続くと読まれ、承諾した側が撤回しにくくなる。逆に、承諾を求めた側は、いつまで使えるのかが分からない。
  • 共有者の一部だけが署名した変更行為では他の共有者の同意が欠け、承諾の効力に疑いが生じる(民法251条1項)。
  • 担当者が署名したが、会社の承諾の権限は不明だった法人の承諾として扱ってよいか確認が必要になり、後から「権限がなかった」と主張される余地が残る。
  • 承諾書に免責・違約金・時効の援用をしない旨を入れた承諾書の効力とは別の問題が生じ、時効の利益の放棄のように効力が認められないものも含まれる(民法146条)。
  • 債務者の承諾書に日付や確定日付がなかった債務者以外の第三者に対抗するための要件を満たさない(民法467条2項)。
  • 承諾書の題名なのに、本文が「合意する」になっていた一方的な承諾なのか、双方の合意なのかが不明になり、署名者の責任の範囲が争いになる。

承諾書を作る前のチェックリスト

  • 承諾の対象を、行為・人・物件・期間・範囲の五つで特定したか。
  • 「本件」などの定義語を、初出の箇所で定義したか。
  • 内容が変わったときに、改めて承諾を得る旨を書いたか。
  • 承諾する人の資格(所有者・共有者全員・代表者・代理人)を確認したか。
  • 承諾書に、免責・違約金・時効・強制執行などの別の効力を持つ条項を混ぜていないか。
  • 提出先の様式が定められている手続では、その様式を先に確認したか。
  • 一方的な承諾にとどめるのか、双方の合意に進めるのか、題名と本文をそろえたか。

承諾書に署名するときの署名・押印の方式や本人確認は委任状の署名・押印・本人確認と共通する点が多くあります。承諾の後で何かあったときの考え方は、委任状・承諾書・同意書のトラブルとよくある質問で整理しています。

よくあるご質問

承諾書と同意書は、何が違いますか?

承諾書は、相手の求めに応じて、その行為をしてよいと答える書面です。賃借権の譲渡や転貸に対する賃貸人の承諾(民法612条1項)が代表例です。同意書は、説明を受けたうえでの了解を残す書面として使われることが多く、法律上も未成年者の法律行為に対する法定代理人の同意(民法5条1項)のように、別の言葉で整理されています。題名ではなく、誰が誰に何を答える書面かで区別します。

承諾書に書くべき事項は何ですか?

承諾の対象を、承諾する行為、行為をする人、対象の物件や債務、期間、範囲の五つで特定します。あわせて、承諾する人の氏名・住所と署名、承諾の日付、内容が変わったときに改めて承諾を得る旨を書きます。提出先が様式を定めている場合は、その様式が優先します。承諾する人に承諾の資格があるかの確認も、書面を作る前に行います。

共有の不動産について、共有者の一人の承諾だけで足りますか?

承諾の対象となる行為によって異なります。共有物に変更を加えるには、他の共有者の同意が必要です(民法251条1項)。共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決めます(民法252条1項)。変更に当たる場合は、共有者の全員の署名が必要になる場面があるため、署名欄は共有者の人数分用意し、登記事項などで共有者を確認します。

承諾書に「時効の援用をしない」と書いておけば、有効ですか?

時効の利益は、あらかじめ放棄することができません(民法146条)。承諾書にそのような条項を入れても、効力が認められないのが基本で、書くことで書面全体の信頼を損なうおそれもあります。承諾書には、承諾の対象と範囲を特定する内容に絞り、承諾とは別の効力を持たせる条項は置かないのが安全です。

債権譲渡の承諾書には、確定日付が必要ですか?

債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知をし、または債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗できません(民法467条1項)。債務者以外の第三者に対抗するには、その通知または承諾を、確定日付のある証書によって行う必要があります(同条2項)。債務者の承諾書では、承諾する債務者、譲渡される債権、譲渡人と譲受人、承諾の日付を特定し、確定日付が必要な場面かを確認します。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別の場面への当てはめは、書面を出す相手、手続の種類、当事者の関係によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は現行の規定にもとづいて書いています。官公庁の手続の様式や必要書類は、提出先の案内で確認してください。参考: e-Gov法令検索 / 個人情報保護委員会 / 法務省 / 消費者庁

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